沿革


東京バッハ合唱団、50年の歩み

カンタータ演奏とバッハ紹介の草分け
辻 荘一(1895-1987)
辻 荘一氏
(1895-1987)
東京バッハ合唱団は、1962年7月、フランス・ストラズブール留学より帰国した大村恵美子によって創設されました。ストラズブールは、シュヴァイツァーを中心としたバッハ音楽中興の地の一つで、留学当時は大学の内外を問わず多くの教会で、毎週日曜の礼拝にバッハのカンタータが演奏されていました。合唱団創設当時の指揮者は小林道夫氏。またわが国バッハ学の泰斗、辻荘一、服部幸三、深津文雄の各氏をはじめ、当時新進気鋭の角倉一朗、高橋昭、東川清一氏らを講師に招き、研究や紹介活動を行なってきました。この合唱団の演奏に加わった若手のソリスト、演奏家たちから、今日第一線で活躍している優秀なバッハ演奏家を輩出し、また聴衆のなかに、その後のカンタータ演奏の隆盛を担う多くの愛好家が育っています。
フォト・アルバム/合唱団草創期

初期カンタータ全曲演奏から円熟期の代表作網羅へ
1979年より主宰者大村恵美子が常任指揮者を兼ねることとなり、「初期カンタータ連続演奏T-W」(1979〜81年)、「ヴァイマル・ケーテン期のカンタータT-X」(1984〜86年)の両チクルスによって、従来顧みられることの少なかった、バッハのトマスカントル就任(ライプツィヒ期)以前の全カンタータ作品が上演されました。この中には多くの本邦初演が含まれます。その後ライプツィヒ期の円熟した作品をほぼ年代順にかつテーマを定めて取り上げ、代表作をほぼ網羅し、今日に至っています。

日本語訳詞での上演
外国声楽作品の移入にあたっては、言語の問題がつねに大きな障壁となりますが、東京バッハ合唱団では、創設以来、主宰者大村恵美子による訳詞上演を原則としてきました。原詞と曲との理想的な一体性を敢えて犠牲にしてまでも、日本語に訳して歌う背景には、魂そのものである母語をとおして、作曲者およびテクストの魂に直接出会いたいとする、この合唱団と主宰者の強力な意思があります。母語で聖書を読み、歌うことを選択した改革者たちの歴史的な意図の実現でもあるはずです。
訳詞演奏の意義「バッハを日本語で歌う」

研究会・ゼミナール
合唱練習と並行して、各作品の内容を深く理解するために、杉山好・礒山雅・樋口隆一の各氏ら専門家を招いて研究会が続けられ、1981年から85年(バッハ生誕300年)にかけては、「マタイ受難曲」(日本語演奏)上演にあわせ、西武百貨店スタジオ200と提携して10回連続の公開ゼミナールが企画されました(戸口幸策氏監修)。その後も、創立30周年(1992年)の「ロ短調ミサ曲」上演に際し公開講座を開催するなど、随時研究会やゼミナールも行われます。

ヨーロッパ演奏旅行
第1回
ライプツィヒ・聖トーマス教会の公演ポスター(大村氏撮影:1983.8.28)
公演ポスター
1983年ドイツ民主共和国(東独、当時)芸術公団の招聘により、東ドイツ4都市での公演を行ない、とくにバッハが後半生を送ったライプツィヒ聖トマス教会では、わが国のアマチュア合唱団として初の演奏となりました。ヘルムート・リリング主宰バッハアカデミー(西独シュトゥットガルト)、フランス・ストラズブール改革教会、テゼ共同体でも演奏。
第2回ベルリンの壁崩壊前夜1988年、前回の官招聘に対し、教会の招きにより実現。東ベルリンの3教会で演奏(内1回は音楽礼拝)。さらにライプツィヒ聖トマス教会(再訪)、バッハ生誕の地アイゼナハ・ゲオルク教会でも公演。
第3回東西ドイツ統合後の1993年、ベルリンとポツダムの教会にて演奏会と音楽礼拝。管弦楽は、ベルリン・シンフォニーオーケストラのメンバーを中心に現地で編成されました。
第4回1997年、ケルン、アイゼナハ、ライプツィヒ、ベルリンで公演、チューリンゲン地方のバッハゆかりの小都市を歴訪。
第5回2009年、合唱団揺籃の地・ストラズブールを訪問。フライブルク大聖堂日曜ミサ客演、シュトゥットガルトで公演(パウロ教会聖歌隊と合同演奏)。

強力な後援会組織
欧米には、教会や大学、放送局、自治体、企業などが合唱団を維持、育成する伝統がありますが、わが国では残念ながら未だ一般化していません。そうした中で、当合唱団を支えているのが「東京バッハ合唱団後援会」です。すでに半世紀にわたり、常時100名を越える方々が、年間2回ほどの定期演奏会と毎月発行の「月報」、毎年7月の創立記念懇親会などで結ばれ、当合唱団の様々な活動をサポートしています。

日本語版楽譜の出版とCDの発行
わが国でのバッハ・カンタータ普及を期し、ドイツ・ブライトコプフ社の協力を得て2000年より日本語歌詞(大村恵美子訳)つき楽譜の出版を開始し、2004年までに「バッハ・カンタータ50曲選」として代表作50曲が出版されました。その後も、公演スケジュールと並行してカンタータの楽譜出版を継続しています。なお前記「50曲」については、当合唱団の定期演奏会における会場ライブ録音を音源としたCDが発行されました(全20巻、2006年完結)。
出版局/日本語版楽譜全集、日本語演奏CD、日本語歌詞[上演用]公開





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